閉幕レポートReport

おおさかシネマフェスティバル、大森一樹監督追悼記念上映と表彰式を開催!

おおさかシネマフェスティバル2023
今年で通算47周年を迎える大阪の映画ファンによる映画まつり、おおさかシネマフェスティバル(実行委員長:高橋聰)を、 3月5日(日)、ホテルエルセラーン大阪5階のエルセラーンホールで開催しました。
メインイベントとなる午後の表彰式では、総合司会の浜村淳さんが時にはゲストが驚くほどネタバレ全開の撮影舞台裏に迫り、 司会簫秀華さんとのコンビで、今年も笑いの絶えない大阪らしい表彰式となりました。
おおさかシネマフェスティバル2023
デビュー30周年で当映画祭初の受賞となった主演男優賞の村上淳さん(『夕方のおともだち』)は、他の受賞者に対してグイグイと近づいてくる司会の浜村さんに対し、自ら距離を縮めてみるというパフォーマンスも交えながら、地元(枚方生まれ、豊中育ち)での受賞に「心から感謝申し上げます」とご挨拶。廣木監督とは23年前のSM作品を含め13本でタッグを組み、ようやく受賞作で主演を果たしたという村上さん。 「2度目のSM作品、(SMに)目覚めたらラッキーと思って挑んだが、痛かっただけでした」と笑顔で撮影を振り返りました。
おおさかシネマフェスティバル2023
『ハケンアニメ!』で主演女優賞を受賞した吉岡里帆さんも、当映画祭で初の受賞となりました。 まずは「こんなに盛り上がっている授賞式に呼んでいただいて、本当に光栄です」とご挨拶。 浜村さんとは同じ京都出身で、地元話でひとしきり盛り上がった後、撮影で難しかった点を聞かれ、「演技に対して、監督の意見とプロデューサーの意見が食い違っているとき。 監督から『沈み込んで、周りが見えなくなる状況』とアドバイスを受けて演じると、プロデューサーが飛んできて『(演技が)暗い』と指摘を受け、そのあたりも現場で作りながらやりました」とエピソードを語られました。
おおさかシネマフェスティバル2023
『ラーゲリより愛を込めて』で助演男優賞を受賞した桐谷健太さんは2018年の主演賞以来、5年ぶりの受賞となりました。 冒頭のご挨拶でマイクを握り、「撮影現場ではその世界をどれだけ堪能し、充実して生きていくかを大事にしています。終わった後に賞で祝福してもらえるのは本当に嬉しいことです。 監督、キャスト、一緒にシベリアに抑留された役者さんたちの力なので、共に分かち合えたらうれしい」と熱い想いを語られました。現在も絶賛公開中の本作について、感動シーンをネタバレしながら熱く語ろうとする浜村との攻防で大いに沸かせた桐谷さん。主人公に厳しくあたる元軍曹役を演じたことについて、「彼も戦争の被害者、いろんな人の人生を狂わせるのが戦争で、その闇を表現する役ができました」
おおさかシネマフェスティバル2023
『サバカン SABAKAN』で助演女優賞に輝いた尾野真千子は、昨年の主演女優賞に引き続いて2年連続の受賞。 「こういう賞は何度いただいても嬉しいもので、昨年に引き続き2度目。嬉しいです!」と喜びを表現されました。 会場にいる金沢知樹監督に視線を向けながら「自由にやってくれということでした。(新人男優賞の番家一路と実弟が)兄弟で息子役をしてくれたので、ふたりに親にならせてもらい、演じる上ではちょっとラクでしたね」。 最近は100%母親役だという尾野さん。ロマンス映画をまたやりたいかという問いに「やりたいです!」と即答し、意欲を見せておられました。
おおさかシネマフェスティバル2023
おおさかシネマフェスティバル2023
映画初出演の『サバカン SABAKAN』で新人男優賞に輝いた一路さんと原田琥之佑さんは、「金沢監督がいるので緊張しなかった」「目の前でいるので下手なこと言えないけれど、ここに立てているのは金沢監督のおかげ」と客席の金沢監督へ感謝の言葉が溢れました。 金沢監督にご登壇いただくと、一気に撮影現場再現のような賑やかな雰囲気に。金沢監督も、原田琥之佑さんが演じた年中ランニングシャツのタケちゃん役のモデルが自分であったことを明かしながら、映画へ想いを語られ、若いふたりへさらなるエールを送りました。 ふたりでまた金沢監督の映画に出演したいかとの問いには「(番家)一路と一緒に何本でも撮りたい」(原田さん)。
おおさかシネマフェスティバル2023
『マイスモールランド』で新人女優賞を受賞した嵐莉菜さんは、川和田監督(新人監督賞)と受賞できる喜びを語りながら、反響が大きかったという本作について「台本を読んで(在日クルド人コミュニティのことなど)自分も知らない世界があることや、5カ国のミックスルーツを持つ自分が経験したことのある葛藤も描かれていたので、早く現場に入って撮りたいと思いました」と話されました。撮影では、自らが経験したことのないことを表現するシーンに不安を覚えたそうですが、「監督が支えてくれた」と、おふたりの信頼関係が垣間見えました。 「これからも、一つ一つ大切に演じていきたい」と最後に抱負を語られました。
おおさかシネマフェスティバル2023
 監督賞では『夜明けまでバス停で』の高橋伴明監督がご登壇。 「制作側からの過酷な条件をスタッフ、キャストが受け入れ、努力、その熱い想いがこの賞につながりました」とご挨拶されました。 おおさかシネマフェスティバルには過去にも受賞経験があり、映画祭で馴染みの高橋監督の受賞作から感じる「社会的孤立」への怒りに対し、浜村さんもデジタル化が進んだ今人々が孤立していることへの警鐘を鳴らし、作品の主題に共鳴されていた様子。 高橋監督も「この機会に浜村さんを見習って、生涯現役をやってみようと思いました。 次回作は沖縄問題に取り組みたい」と、次なる目標を見据えておられました。
おおさかシネマフェスティバル2023
おおさかシネマフェスティバル2023
日本映画作品賞(『サバカン SABAKAN』配給:キノフィルムズ)では小佐野保エグゼクティブプロデューサー、外国映画作品賞(『Coda コーダ あいのうた』配給:ギャガ)では関西宣伝を担当された大手広告社の下高原啓人さんが代表して登壇され、高い評価を受けた受賞作について語られました。
おおさかシネマフェスティバル2023
他受賞者のみなさんコメントをご紹介します。(音楽賞:大島ミチルさん『サバカン SABAKAN』、撮影賞:斉藤幸一さん『とんび』はご欠席)
おおさかシネマフェスティバル2023
脚本賞:梶原阿貴さん『夜明けまでバス停で』
「(俳優からキャリアをスタートしたが)女性の俳優は30歳を過ぎると仕事が劇変する側面があるので、自分で脚本を書き、女性の雇用を増やそうと、男女雇用均等法を実践しています。 本作はホームレス女性殺人事件のあったバス停のすぐ裏手に住んでいたことから着想を得ており、映画の魔法で彼女を死なせないという選択をしました。(板谷由夏さん演じる主人公の年齢が、実際の被害者年齢より若いことを言及されると)64歳でも45歳でも危険であることは変わりないですし、(映画で描写するなら)若い女性の方がいいという風潮には抗いたい。 脚本執筆にあたっては、社会的な背景がある事件なので、社会性と娯楽性のバランスをとるのが難しかったです」
おおさかシネマフェスティバル2023
新人監督賞:山﨑樹一郎『やまぶき』
「大阪出身で岡山県真庭市という山がたくさんある場所で生活しながら、映画を作っています。生活しながらモヤモヤした気持ちや憤りをどういう形で出していくか。 制作環境が大変なので、インディペンデントで持続させるために、色々な方のご協力や、真庭市の行政や企業とタッグを組みながら、自主制作をしています」
おおさかシネマフェスティバル2023
新人監督賞:川和田恵真『マイスモールランド』
「世界最大の少数民族と呼ばれ、数は多いけれど国を持たないクルド人の物語で、現在は日本に2000人ほど住んでおり、その数は増え続け、しっかりと把握しきれていない状況です。 わたし自身もこの状況を知らずに驚いたので、もっと知りたい、伝えたいと思って作りました。社会的な面がある一方、高校生の主人公とその家族の視点で描いた青春映画として楽しんでいただける作品。 主演の嵐さんとは、ミックスルーツとして日本で生きて感じてきたことを共に話し合った中で、彼女ならこの作品を一緒にやっていけると感じました。 映画を作るにあたり、たくさんのクルド人の方にご協力をいただいたが、難民申請中で出演いただくのは難しいので、内容面など様々な撮影のサポートをしていただきました。 この場で、改めて感謝の気持ちをお伝えしたい」
おおさかシネマフェスティバル2023
おおさかシネマフェスティバル2023
ワイルドバンチ賞『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』辻凪子監督、大森くみこさん(活動写真弁士)
「大阪で生まれ育ったので、このような力強い賞をいただき、今日はワイルドな映画の主人公(ピザ屋でアルバイトをしているジャム)の衣装でやってきました。 昨年活弁付き新作無声映画を作り、生演奏、生の活弁で全国8カ所の映画館を廻り、小さい子どもから大人まで、声を出してケラケラ笑ってくれたのが、とても嬉しかった。 これからも2025年の大阪関西万博での上映を目標に、これからも頑張りたいです」(辻監督) 「初めて活弁を見たとき、映画なのにスクリーン横で人が喋り、ピアノ伴奏があるのに衝撃を受けて一目惚れしました。関西で活動を続けてこられた先輩方や、令和の時代に新作活弁映画を撮ってくださった辻監督のおかげで、今、関西では活弁ブームがきているのではなかろうかと」(大森くみこ弁士)
おおさかシネマフェスティバル2023
午前は昨年11月に急逝したおおさかシネマフェスティバル総合プロデューサー、大森一樹監督の追悼記念上映として、『暗くなるまで待てない!』(1975)と、そのアンサー映画と言える『明るくなるまでこの恋を』(1999)の2本を上映しました。『暗くなるまで待てない!』の上映後には、出演者の津田裕子さん、南浮泰造さん、栃岡章さんがご登壇。 同作の撮影を担当した高橋聰実行委員長と共に、映画の舞台裏や、デビュー前後の大森監督にまつわる思い出を語っていただきました。
おおさかシネマフェスティバル2023
さらに『明るくなるまでこの恋を』の上映後には、景山理さん(『明るくなるまでこの恋を』製作、シネ・ヌーヴォ、シネ・ピピア代表)、長谷川千尋さん(元朝日新聞記者)、藪下哲司特別委員(元スポーツニッポン)がご登壇。春岡勇二選考委員長の進行により、大森監督とのエピソードを語っていただきました。 同作を一晩で撮ったというシネ・ヌーヴォでの撮影を振り返った景山さんは、「100万円で映画はできたものの、炭で真っ黒になったスクリーンの貼り直しに追加で100万円かかりました」と今だから言えるエピソードを披露され、永遠の映画青年、大森監督が懐かしい逸話の数々をどこかで笑って見ていてくださるような、そんな特別な時間となりました。
おおさかシネマフェスティバル2023
おおさかシネマフェスティバル2023